【サウナそのもの井上勝正 風呂あがりの夜空に/第2回】
10月に小学校で運動会があった、
もちろん息子も出場し、リレーに出る。
昔からかけっこは早い、赤ちゃんの頃
立ち上がると同時に走り出したぐらいだ。
初めて芝生が広がる公園に連れて行った時は物凄い勢いでアップダウンのある芝生の上を走り出した、笑いながら。
転んでもまた起き上がって走り出す。
そんな息子は歩き出してから毎日お散歩して当時家の近くの公園にいた3つぐらいは年上の男の子や女の子達と走り回り
植え込みに突っ込んだり砂場に突っ込んだり遊具のジグザグを走り抜けたりお菓子を一緒に食べたりして可愛がってもらったそんな脚力だ。
それをこの目で見続けたボクは知ってる、速い。
なので運動会での息子の成績は幼稚園の頃から良いがスポーツの類いはやってない、
チームスポーツは苦手らしいし
ゲームは別として最初から何かを競い合う事はしたがらない。
そんな息子だけどまた運動会を前に走るのが
「イケる感じになってきた、
見てて! こうやってスタートを切るっ!」
と言って部屋でそのフォームと踏み込みをダダッッとボクに見せてくれる。
そして ヘヘヘ と笑う。
夜に部屋でドンドンしたらダメだよとか言いながら思う、
実はボクは息子の運動会に行ったことはない。
正確には幼稚園の時一回あるけど
雨で順延になったか?運動場に何か問題があったのか?平日に特別に小学校の校庭に場所を移して行われた時の一度だけだ、
いつも土日や祝日は仕事なんだ。
息子は今年11才だ。
最近は小学校の先生と話す機会がある、校長先生にもよく話をしに小学校に顔を出している。
職員室に行く廊下で児童の描いた画を見たりするのが好きだ。
そして先生達との会話のなかで
「お父さん、今年は運動会見にきてあげてください、息子さんの走っているところ見てあげてくださいよ。」
という風になった。
ボクはスケジュール帳を睨みながら女性の校長先生と話す、
「井上さん、運動会来てあげて。息子さん、喜びますよ。」
そうなのかなぁ…
よし、息子の運動会の時は休みを取って
応援しに来よう。決めた。
後日、事前に参観日があり運動会のリレー走の練習をソーシャルディスタンスを保ち他の親と見学する、
クラスメイトの両親、いや、、平日の昼間なのでほぼお母さん、おじいちゃん、おばあちゃんかな?
父親は見たところリベラルだ。
ボクはバトンパスの練習をトラックの一番前まで出て見学する。
まだ暑い時期だったので
水分はマメに取らせてあげて欲しいな、そう思いながら見ていたが
そんな時
「よし!休憩ー。みんな水分取ろー。」と先生の合図、
息子のクラスの担任の方は二十代前半の男の教師だ。
クラスのみんなは校庭の朝礼台にまとめて置かれたそれぞれの水筒めがけて軽く走っていく、
当然息子もいる、
ボクは しまった…。 と小声で言った。
水筒を持たせてない。
みんなは朝礼台にたどり着いてそれぞれのカラフルでかなり本格的な水筒に手を伸ばして
美味しそうにゴクゴクとお茶だか水だかを飲んでいる。
…これはちょっと、外の自販機で息子に麦茶かスポーツドリンクでも買って来てやろう、
と思ったら息子はテテテ…とその水筒の朝礼台から離れて校舎のカゲに走っていく。
ボクは校庭のトラックから
先ず息子の方に歩く、サイフの小銭を確認しながら
いま飲み物買って来てやるから待っていろ。
息子の走って向かった所は
回転式の蛇口の散水栓があった。
飲んでも大丈夫な水の所。
息子は散水栓の蛇口をキュ…と上に向け
水を出し、
少し中腰になって口をつけずに蛇口から水をゴクっゴクっゴクっ…
と飲んで、ふぅー、と言って手で口をくっと拭って
歩いてそっちに向かっているボクを見つけて ニコッ と笑って手を振って
またみんなの輪の中に走って戻っていった。
担任の先生が「集まってー!」と児童を呼ぶ、
リレー走、バトンパスの練習は再開された。
息子や息子の友達達のリレーの練習を見ながら空を見上げる、今日は晴れている。
だけど
天気予報では運動会のある土曜日は台風で雨の予報だ、
きっと中止になってしまうだろう。
台風が何だっていうんだ、
だけどオレ達に嵐は避けられそうにない様だ。
せめて今夜は息子とご飯を作って一緒に食べよう、
家族と一緒に食べればご飯は美味しいに違いない。
[サウナそのもの 井上勝正 プロフィール]
サウナ熱波道 JSNA認定熱波師 JSNA熱波師検定座学講師 ドイツサウナ協会認定熱波師 ライター サウナメンター 元大日本プロレス所属
2020年動画版熱波甲子園準優勝(熱波道として)
2019年熱波甲子園社会人の部優勝(大日本プロレスチームとして)
2020年夏から「魁!!熱波塾」のオピニオンリーダーとしてその世界観を拡大していく。