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【サウナそのもの井上勝正 風呂あがりの夜空に/第6回】お前の体は噴水か

井上勝正

おふろの国の林店長が運転する車に乗り
どこに向かっていたのか?記憶では自宅だ。
そうだ、家に帰る途中に初めてロウリュや熱波と言う言葉を聞いた2008年の終わりか2009年の最初だ。

 

ロウリュはフィンランド語、
熱波とはそもそも気象用語だ。

 

林店長はハンドルを握る、赤信号で
「バスタオルでお客さんを扇ぐんですよ、それ熱波って言うんです。」そう言いながら車を停める。

 

「日本ではロウリュを熱波って言うところもあるんです。」

 

そう言うものがマジであるのか?そう思いながら頭の中では色んな思い出が浮かんでは消える、
そう世界名作劇場「牧場の少女 カトリ」や大阪のドブ川に落ちた事、
辰巳湯のサウナのヤクザの親分…

 

 

ボクは15才からボディビルを始めた。
別にイジメを受けていたから仕返ししてやろうと思って始めたわけじゃない、
…まぁ、結果的にそうなってしまうのだが基本的にそういう志ではやっていない。

 

トレーニングを始める最終的な切っ掛けをつくったのは漫画「北斗の拳」の影響だ。

 

出てくるキャラクター皆の肩や腕や背中がモコモコに分厚い筋肉に覆われて
ウエストが細くて腹筋も筋量がありバキバキに割れている。

 

最初は主人公ケンシロウの
「あたたたたたたた」とか
やられた方の「あべし!」とか面白いなぁ。…こんなわけないやろ。

 

と思いながら読んでいたが北斗の拳を読む事が慣習的になるとそれがたまらなくかっこ良くなって来る。

 

だが北斗神拳は無理だ、そんなものは無い。
南斗聖拳も無理だ、そちらも無い。

 

だからボクは小学生の頃から家業である印刷会社の手伝いで得たお金を使い
通信販売でケンシロウが着ている様な革ジャン、つまりライダーズジャケットを買おうと思った、先ずは着るやつ。

 

それって実際にどこで売ってるか解らなかったが
ちょうど週刊少年ジャンプに革ジャンの通信販売の広告が出ていてカタログ無料進呈とあったので即電話してカタログを取り寄せあれやこれや見ながらケンシロウの革ジャンに一番近い物を見つけて電話で注文した。

 

その時に初めてあれはライダーズジャケットと言うのか、と知った。無垢な少年はこうして物を覚えていくものだ。
郵便振替で確か送料込み2万円ぐらいを支払い、到着まで3週間ぐらいかけて家に届いた。

 

これだ、これこれ!

 

梱包の箱を開けてビニール袋から取り出しハンガーにかける。

 

これだよこれ、ボクはニンマリしたが
いわゆる 普段着るには難しいぞこれ?と言う事に気づく。

 

馴染んでない新しくて硬い皮ジャケットだけ買ったのだ、ズボンは買ってない、そのカタログのはケンシロウのイメージの黒い革パンじゃなかったし靴もスニーカーしか持ってない。

 

もっと先の時代にはライダーズジャケットも誰でもポピュラーに着る様になるがそれよりも以前のバブル少し前の頃(1985年頃)に
14~15才の少年がライダーズジャケットでママチャリに乗ってるってボクぐらいだろう。

 

時代が早すぎた。

 

それに今は夏だし。

 

 

買ったライダーズジャケットは長袖だ、ケンシロウが着用している袖の無いのはカタログには載っていなくて袖無しのベストがあるとは知る由もない。

 

その時点で北斗の拳の元ネタになった「MADMAX2」は知っていてメル・ギブソンはライダーズジャケットの袖を切っているし当時新日本プロレスに出ていたヒロ斉藤さんも入場時にライダーズのベストを着用していたがこれも袖を切っていると思っていた、プロレスラーってとりあえず袖を切るし。

 

なのでオレも切るか、とハサミを取るが2万円もしたので一旦思いとどまる…
だいたいそれはケンシロウじゃない、MADMAXかヒロ斉藤さんになってしまう。

 

でも肩パットは付けない、当時コスプレと言う言葉は確かまだ無かったけど、コスプレしたかったわけじゃない。

 

しかもMADMAXも肩パット付けている
ヒロ斉藤さんは肩パット付いてない、
だったらもうどっちでも良いじゃないか。と思うけどそれは違うのだ。

 

もはや男心と秋の空だ、夏だけど。

 

よく解らなくなってきたが
例えばどうだろう?仮にライダーズジャケットをベストに改造したところでそこから露出するボクの腕は細すぎるのではないのか!?
あらゆるトレーニングを始める前のボクは体重が49kgで腕回りが30cmもないのだ。

 

スポーツ等やってなくテレビや漫画ばかり見ていたのだ、ちょっとこれでは北斗の拳でもMADMAXでもない。

 

期せずしてボクは
「形だけ真似てもしょうがない、要は中身だ。」と言う論理にたどり着く。

 

ボクはまたまた雑誌の裏表紙に広告がでている日武会という所から
早速 アポロエクササイザーやらエキスパンダーやらバーベルを通信販売で買い、いよいよ体を鍛え始めるのだ、
部屋で!

 

それからは通信販売で腕立てのプッシュアップバーやらバンドグリップやら
リストウエイトの重いやつやらアンクルウエイトやら鉄アレイやら買って母親が2階の床が抜けるのでは?との心配をよそに昔の木造長屋の2階にトレーニング器具を揃えていった。

 

書店で月刊ボディビルを見つけて買って読んで独自で毎日3時間トレーニングを開始する。

 

そしてトレーニングを終えて近所の銭湯「辰巳湯」に行ってサウナに入るのが気持ち良かった。

 

サウナの中でも誰も居なかったら腕立てや腹筋をやった、
10代の代謝の良い体からは汗が良く出た。

 

別にサウナでトレーニングしなくても汗が物凄い良く出る様になった、自分でもびっくりするぐらい出る。

 

サウナに入る前にジュースや水を飲んだら更に出る、そういう事もこの時代に既に発見する。

 

きっとそういう事に気づいているのは世界中でオレだけなのでは?…そんなワケないが、まだまだサウナ前には水分…水分と言わなかったし運動中は水を飲まない方が良いと言う間違った風潮がまかり通った時代にそんな「水飲めば凄い」って気持ちになり一人喜ぶ。

 

そこの銭湯サウナに行くたんびに居たヤクザの親分はそんな
すぐに汗まみれになるボクの体の変化を見てこう言った、

 

「お前の体は噴水か。」

 

 

 

おふろの国の林店長が運転する車でロウリュ熱波の話を聞きながらボクの自宅に向かっている、家まではまだ距離がある。

 


【サウナそのもの井上勝正 風呂あがりの夜空に/第1回】
【サウナそのもの井上勝正 風呂あがりの夜空に/第2回】
【サウナそのもの井上勝正 風呂あがりの夜空に/第3回】
【サウナそのもの井上勝正 風呂あがりの夜空に/第4回】素っ裸でサウナに入る牧場の少女
【サウナそのもの井上勝正 風呂あがりの夜空に/第5回】


 

 

[サウナそのもの 井上勝正  プロフィール]

サウナ熱波道 JSNA認定熱波師 JSNA熱波師検定座学講師 ドイツサウナ協会認定熱波師 ライター サウナメンター 元大日本プロレス所属

2020年動画版熱波甲子園準優勝(熱波道として)
2019年熱波甲子園社会人の部優勝(大日本プロレスチームとして)
2020年夏から「魁!!熱波塾」のオピニオンリーダーとしてその世界観を拡大していく。