【熟成兄弟の SAYMEAT ※まよったら、とりあえず肉って言っとけ/第4回】すぐ動くことだ。もう一度、残酷なほど、単純なアドバイスを送る。
彼とは2度会った。
一度目は熱波を受けに、2度目は彼のホームサウナを案内してもらった。
彼の人柄説明に関しては、私が感じたことが多々含まれることをご理解頂きたい。
彼は30歳手前の不器用な男である。
話しをするのが得意というわけではない。
今している仕事はサウナとは一切関係がない。
彼が人一倍情熱を注いでいるサウナコミュニティが彼の生きがいである。
そのサウナコミュニティの主な活動は、不定期開催のテントサウナ会である。
この情熱は、よく言えば情熱だが、私の目には依存のようにも映った。
それがないと生きる意味を失うほどの、哀しみさえ感じた。
テントサウナの薪を準備し、料理を作り、サウナ参加者を楽しませることが彼の歓びである。
彼は、そのコミュニティメンバーのことが大好きであると私に教えてくれた。
正直、そこまで好きなものや人に出会えたことが羨ましい。
そんな彼とサウナに入り、色々と話しをした。
人生で忘れられない思い出に、薪割りやサウナ作りを挙げてくれた。
サウナのためなら、どこへでも行くその姿勢は、ライブやフェスで全国を飛び回る人たちを彷彿とさせる。
狂気じみたサウナへの想い。
彼は、人を幸せにするサウナ作りがしたいと言う。
彼はサウナ作りが出来そうな会社に目星をつけていた。
その会社をA社とする。
A社は関東圏ではない。
彼は、2つの理由で葛藤していた。
給料と彼が愛するサウナコミュニティだ。
A社への転職が叶ったとしても、今の会社でもらっている給料以上の保証はない。
むしろ、ダウン濃厚だそうだ。
また、彼が愛してやまないサウナコミュニティと距離を置くことが心残りであると。
こういう人生の岐路は訪れる。
私の感想は、「それでもすぐに行動するべきだ。」である。
私のモットーとして、人生でやりたいことが見つかったら即行動である。
後回しはありえない。
私の大学時代の友人が教えてくれた話を紹介する。
とある講義で、教授が大きい空っぽのガラスケース、大きい岩、中ぐらいの岩、小さい岩、それと砂を持ってきた。
先ず、教授は空っぽのガラスケースに大きな岩を入れた。大きな岩を入れ続け、大きな岩が入らなくなると、中ぐらいの岩を、そして小さい岩を。ガラスケースが岩で満杯になると、岩と岩の隙間に砂を流し込んだ。
最初は空っぽだったガラスケースが、瞬く間に異なる大きさの岩と砂で満たされた。
教授は学生に向かって、問いを投げかけた。
「私は今、人生で大切なことを表現した。それは何だろう?」
聡明な顔をした学生が答えた。
「人生では、工夫すれば時間は見つけられる。時間を作りだすことが大切です。」
教授曰く、「全く反対だ。人生では、重要なことから先にどんどんやっていかないとダメだ。後からでは、大きな岩が入らないように、時間がなくってからでは手遅れだ」
そう言い放ち、ガラスケースにコーヒーを注ぎだしで、こう締めくくった。
「そして、どんなに忙しくても友達とコーヒーを飲む時間ぐらいは作れるものだ」
大学生のときにこの話を聞いて良かったと思う。
話を戻そう。
給料とサウナコミュニティについてだ。
給料に関しては、目先の給料なんか無視するべきだ。
独身なら、なおさらだ。
仕事と給料の関係だが、現時点で第三者に評価される能力がない以上、高い給料はもらえない。
だから給料は諦めろ、という話ではく、能力を身につけて給料を上げていくことに意識を集中する方が大切であると伝えたい。
私がサウナ作りという能力で稼ぐなら、兎に角、日本一有名なサウナ作り野郎を目指す。
そして、「あなたに作ってもらいたい」と全国から指名される状態を作る。
仕事のピラミッドでいうところの頂点、つまりサウナ作りに関する日本一の営業マンになる。
この状態になれば、稼げる。
受注した案件を自分で作るのもよいし、信頼できるパートナーに任せることもできる。
もちろん、サウナを作りたいというニーズがあってのことだが。
サウナ作りの第一人者は?と聞かれてもパっと思いつかないので、サウナ作りの道は先人がいない道である。
最高じゃないか。
自分の能力が評価してもらえない異業種に飛び込む場合、目先の給料は無視するに限る。
現時点で能力がないだけで、やりたいことが決まっていれば能力なんて後からついてくる。
また、彼が愛するサウナコミュニティに関してだが、彼が距離を置いても、彼とそのサウナコミュニティが絶縁関係になるわけではない。
自分がやりたいと思ったサウナ作りという仕事に打ち込むことで、今とは違う形で今以上にサウナコミュニティに貢献できる可能性が多いにある。
自分を貫くことで本当の意味でみんなに喜ばれる、と私は信じている。
人生の岐路で、いいとこ取りの選択肢などない。
人生でやりたいことが見つかることは本当に素晴らしいことだ。
昨今では、自分の心の声を掬い取れる人間が少ないように思われる。
私なら飛び跳ねて、自分のやりたい道を選ぶ。
やりたいことが見つかれば、ワクワクしすぎて他のことが手につかないだろう。
現に、手につかなかった。
彼は危険を感じているのだろう。
だが、危険な道はだいたい行きたい道である。
なぜなら、心が興味を示さない道には関心そのものが湧かない。
気にならないから危険そのものを感じない、気になるからこそ危険を感じる。
自分の人生を真剣に生きることでしか、選択した道が正解だったと思うことはできない。
仕事は時間に直結し、時間は人生に直結する。
すぐ動くことだ。
もう一度、残酷なほど、単純なアドバイスを送る。
すぐ動く。それしかない。
彼から感じた狂気じみたサウナ作りへの愛、それが本物かどうかは分からない。
いや、本物かどうかなんてどうでもいい。
行動、行動、行動。
一度決めたら、とりあえずパッと動いてみる。
違うと感じれば、途中で方向転換する。
自分を鼓舞し、責任をもち、晴れ晴れとした気持ちで立ち向かおう。
かくいう私も、新しい世界に飛び込むときは、躊躇した。
だからこそ、彼の気持ちが分かる。
大事なコトを後回しにしてきた経験者として、もう一度言う。
心の声に従い、飛び込もう。
こうやってエールを送るぐらい、私は彼を応援している。
やりたいことを貫けば、現実の壁にぶつかるだろう。
壁は他人が入ってくるのを防ぐために、私たちの前に立ちはだかるとも言える。
私のまわりも壁ばかりだ。
壁の向こう側で、また一緒にサウナに入ろう。
彼のTwitterアカウントは@Wmotohiro
[熟成兄弟プロフィール]
<藤原 佑太>
1985年生まれ。奈良県北葛城郡王寺町出身。
一浪を経て大阪大学へ入学するも、理系は向いていないことを悟り中退。英語力ゼロ状態でアメリカ留学を決意。UCSB(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)を卒業。
2011年太陽工業(株)に営業として入社。定温資材(小口配達用の保冷ボックス、氷温熟成、雪室)の部署で仕入れから営業(新規開拓と既存ルート営業)までの業務を学ぶ。バンコクに3年駐在し、海外新規開拓営業を行う。波多野と出会う。
<波多野 嵩士>
1984年生まれ。神奈川県横浜市出身。
尚美大学卒業後、雑誌編集者を志すもエントリーシートの時点で全て撃沈。バイト先メンターの「ITバブルに乗っかれ」とのアドバイスを真に受けて、IT系上場企業へ入社。プログラマーと営業を3年経験し、中国大連へブリッジSEとして3年駐在。その後、現地営業責任者としてバンコクで6年駐在し、事業所の立ち上げを経験。また立ち上げ3年で単年度黒字化を達成。藤原と出会う。