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【サウナのサチコ 裸の粘土サウナー/第1回】マジでととのう5秒前

サウナのサチコ

どうも。

「春の七草」は言えるけど「5つの小」は言えない、サウナのサチコです。

行ってまいりました、「おふろの国」。
埼玉県民の私が、なんで神奈川の鶴見まで行ったか。それは私の作った粘土サウナーたちを売り込むためです。「おふろの国」の店長である林さんは、私のインスタとnoteのフォロワーさんなのです。ということはもう絶対、私のことが好きに決まってます。だからココに売り込むことにしました。

約束は17時。

気合が入りすぎて自宅を11時に出ました。で、なんだかんだで「おふろの国」がある新鶴見橋のバス停に着いたのが13時。あと4時間か・・・長っ!

時間はたっぷりあるのに、なぜかバス停から小走りになる私。どうも温浴施設の近くまで来ると小走りになる癖がありまして。すると見えてきました。「RAKU SPA」の看板。あれ? 正式名称は「ラクスパ おふろの国」だったかなと思いながら、思わず交差点を渡りそうになりました。すると手前に大きな看板があるじゃないですか。白と青の文字で「ファンタジーサウナ&スパ おふろの国」と。そっちか!
間違えなくてよかったです。
17時までラクスパで過ごしてしまうところでした。

さて。

まずは林さんの印象を良くするために、先にサウナに入っておくことに。3階で受付をすませると、玄関にも女湯の前にもお土産品が並んでいるのが見えます。ここに私の作った粘土サウナーたちが並ぶのか・・・と、勝手に想像しました。
まずお客さんが「お? 裸じゃないか〜」とニヤニヤしながら手に取ってくれるでしょ。そしたら粘土の腕がボキッと折れて「こんなんで金とる気か!」・・・ダメダメ。考え始めるといつも暗い方にいくので、とっととサウナをいただくことにしました。

いや〜、ここのサウナは熱くて痛かった。98度です。痛いと感じるサウナは、私の経験上これまで3軒ありました。まずは草加健康センター。次はサウナ錦糸町(通常は男性専用ですが、レディースデイに行きました)、そしてここ、おふろの国。後から林さんに聞いたところ、土日は少し温度を上げているそうです。それにしても体の先という先が痛い。貧乳の方、要注意です。

お次は水風呂。90センチの深さがあります。私は水風呂が苦手で肩まで浸かるのに数か月かかりました。ですからこの有無を言わせず人を沈ませる水風呂、いい感じです。外気浴は露天風呂の前。いつもは椅子に座る派の私でも、ここでは寝るタイプが最高でした。

それから打たせ湯と打たせ水。これも良かったなー。
それぞれ電話ボックスみたいなところに入って、一人きりで打たれます。「ボタンを押してから5秒後にお湯が出ます」という張り紙があるのは、ボタンの感触が弱いために何度も押し続ける人がいて、壊れてしまうからだそうです。

そしてあちこちで悲鳴のような音を立てる扉も良かった。いちいち「壊れています」だの、「重いです」だのという張り紙がしてあるのも私にはヒットでした。ぜひ修理しないでほしい。
これ以上褒めるといやらしい記事になるのでやめときます(ディスってるという気もするけど)。

サウナに入った後は、食堂へ。「おふろの国」名物の唐揚げをいただきました。大きくて美味しい。
ビールも飲みたかったけど、面接前なのでオールフリーで我慢です。

サウナのサチコ

私のiphone6でもかなり鮮明に撮れるのは、窓からたっぷり日光が差し込んでいるから。
しつこいようですがここからRAKU SPAもよく見えます。そしてその向こうに遠く、工場の煙突。日曜だというのに煙がたなびいています。仕事してるのかな。

ゆっくりと穏やかな時間が過ぎていく・・・と思ったその瞬間、前のカウンターで若いお客さんが、お年寄りを叱っているじゃありませんか。そして二人の間に、食堂スタッフの女性が割って入っています。一体何があったの? これ以上詳しく書くとお客さんを特定してしまうし、逆恨みが怖いのでやめときます。というより私が書きたかったのは喧嘩の内容ではなく、仲裁に入った女性スタッフのことなのです。

あれは「食堂のおばちゃん」なんかじゃない。「なだめのプロ」です。

まずお年寄りに「なぜ若者が怒っているのか」を説明しつつ、さりげなく若者にも「お年寄りに悪気がなかった」ことを伝えています。その後、お年寄りはカウンター席から降りて、丁寧に若者に謝っていました。若者もそれで引き下がり、スタッフさんと一緒にその場を去りました。
あぁ、良かった。
私は一人カウンターに残ったお年寄りの背中を見ながら、胸をなでおろしました。
が、それだけでは終わらなかったんです。さっきのスタッフさんが一人で戻ってきて、お年寄りに再び優しく声をかけているじゃありませんか。

サウナのサチコ

すごい。

もしあのままで終われば、お年寄りはきっとやりきれない気分で工場の煙突を見ていたでしょう。孫みたいな若者に怒られて、内心悔しいに違いありません。下手したら、もうここには来ないぞと思うかも。皆さんも経験がありませんか? サウナはとても良かったのにそこにいたお客さんの態度で、その施設の評価をつい下げてしまった経験。私はあります。温浴施設において人との出会いはそれだけ大事です。
長いスタッフ経験と人生経験がなければできない配慮。私は唐揚げをつかんだ箸を置いて、この女性スタッフに拍手したい気持ちでした。
あぁ、いいものを見た。

しかしこの時まだ15時を過ぎたところ。あと2時間か。
唐揚げが胃袋で消化されていくのを待ってから女湯へ。小学校高学年の女の子がちらほらいます。この微妙な年齢の子を温浴施設で見るのって珍しい。私は自分の子どもの頃のことを思い出しました。

私が小学生の頃は家風呂が主流。
スーパー銭湯はもちろん、昔ながらの銭湯も近くにはありませんでした。で、うちのお風呂は水からガスで沸かす昭和タイプ。浴槽は足を高く上げて入る、小さくて深いアレです。シャワーなどもちろんなく、浴槽のお湯を洗面器に移して髪を洗ってました。石の上にすのこが敷いてあるだけの洗い場は寒く、北側だったこともあって暗かったのを覚えています。

このお風呂がある我が家(アパート)は2DK。そこに家族4人で暮らしていました。もっと言えば18歳まで私は、兄と同じ部屋だったんです。兄の机の引き出しに入っている、タイトルのないビデオを決して見てはいけないと思い、私はいつも窮屈でした。とにかく早く大人になって自由になりたかった。お金持ちでなくていいから、自分の稼いだお金で好きな物を食べたい、自由になれる自分の部屋が欲しいと思い続けていました。19になって引っ越し、やっと自分の部屋が持てるようになっても、薄い壁一枚挟んだ隣はトイレ。お腹のゆるい父が常に入っています。私は枕に顔を埋めていつも叫んでました。

「これじゃない!」

それからさらに時が過ぎ、もう十分に大人になった私は、自分の働いたお金で好きなものを食べて好きな所に行けるようになりました。でもどうしてかな。なぜかまだ胸の奥の奥の方が解き放たれていない気がします。子どもの頃よりずっと自由になれたはずなのに。
大人になって自由を手に入れた私は、寂しさも手に入れることになりました。自分の居場所がわからない。落ち着く場所が見つからない。そして行き着いたのがサウナでした。

誰とも話さず一人きりで汗を流し、体に出たあまみを眺め、喉の渇きや空腹を心から感じる。そうしているうちに、自分が生きていることを実感するようになりました。そしてこれまでの自分も、今の自分もこれで良かったのだと思えるようになりました。「これじゃない!」と思い続けてきた完璧主義の自分を、よく頑張ってきたねと初めて抱きしめることができたのです。ととのったのです。
サウナはそういうところです。
この話にどれくらいの方が共感してくださるかは分かりませんが。

「寒いねえ」

不意におばあちゃんに声をかけられました。
こんなご時世ですから笑顔だけ返しました。するとおばあちゃんは「もうあんたを離さない」という目をして近づいてきたので、慌ててその場を失礼しました。ごめんなさい。もしかしたら私に、人生の意味を教えてくれようとしてたのかもしれないけど。それは自分で探すことにするよ。

お風呂を出たら、やっと16時半。
勝手に待ちくたびれたので、店長の林さんを呼んでもらいました。

林さんて、こんな人。

サウナのサチコ

持参した百合子人形も気に入ってもらえて、おまけにおふろの国で売ってもいいよと言われて、やっぱりリモートじゃなくて直接会いに来てよかったと思いました。

話が弾んだところで林さんがいきなり「熱波師検定Bを受けた方がいいですよ」と言いだし、サウナにいた時とは違う汗が、私の背中にどっと噴き出しました。なぜ粘土作ってサウナの記事書いてるだけの文化系の私が、熱波師検定を受けるべきなのでしょう。林さん曰く、これを取得するとサウナやロウリュの見方が変わるそうな。60代のおじさんでも受けてるから大丈夫って。

ムキムキの性欲強そうなおじいちゃんしか頭に浮かんできません。

検定料、高いんですね。サウナ20回分くらいあります。
でも受けることにしました。勢いです。

玄関を出るまで、林さんは私を見送ってくださいました。
そういえば私に全く背中を見せなかったな。さすが店長!と思ったけど、
きっとあの背中にはこう書いてあったんだと思う。

サウナのサチコ

サチコ、マジで斬られる5秒前です。この記事、全力で書いてます。

そろそろ帰ろう。
階段を降りてたら、後ろから「気をつけてね、ねえ気をつけてね」と女性スタッフに声をかけられました。振り返って「気をつけます」と答えたら、「あら、あのお父さんに言ったのよ」と私の前で階段をよろよろ降りているおじいちゃんを指差してました。苦笑い。

そんなところです、「おふろの国」は。
え、よく分からなかったって? いいです、それでも。
こんな長い文章、最後まで読んでくださっただけで十分です。あとはご自分の目で確かめてくだされば、なお嬉し。

あ、自己紹介が遅れました。これから毎月第4月曜日に記事を書きます、サウナのサチコです。
元アイドルです(そういうことにしておけと林さんに言われた)。
次回はおそらく熱波師検定Bの体験談を書きます。絶対私、熱波師には向いてないけどね。

講師はこの人ですって。それではまた。

サウナのサチコ

 

[サウナのサチコ プロフィール]

埼玉県在住。2020年1月よりサ活を始める。
「ととのった!」と実感するまで半年かかった不器用サウナー。
役に立たないサウナ情報(主にお客さんの話)と自作の紙粘土サウナーをnoteとインスタに投稿中。