【天拝の郷 柴田 健太郎の 九州サウナは熱かです!/第4回】唯一無二のご当地サウナが作りたい
天拝の郷サウナの改装プランを考えているころに巷ではサ旅が流行り始めていました。
サウナ聖地巡礼したり、ご当地のサ飯もめぐったり、サウナ部でサウナに研修旅行に行ったりして、サウナイキタイで各地のサウナを調べてホーム以外のサウナを楽しむ方が増えてきました。
当店のサウナがせっかく改装して気持ちの良いサウナになるのだったら、近所の方だけでなく、福岡県全域からも、全国からもお客様に来て頂いてたくさんの方に楽しんで貰いたいという気持ちがありました。
サ旅で行きたいと思って貰えるサウナになるには普通にセッティングがいいだけじゃだめなのです。
飲める水風呂や灼熱の薬草サウナ・ボタンを押したら天然水が降り注いだり171cmの深さのある水風呂・108つも仰ぐ名物熱波師がいたり・浴室にサウナコタがあったり・大自然の中のフィンランドみたいな薪サウナ・逆に都会のど真ん中のビルに薪サウナ・他では味わえなくて、そこにしかない唯一無二のサウナが作りたかったのです。
天拝の郷の、ここにしかないご当地のものを考えたとき、ひとつしか思い浮かびませんでした。
それは菅原道真公でした。
うちの施設は福岡県筑紫野市の天拝山の中腹にある為、天拝の郷という名前になりました。
この天拝山とは、平安時代前期に昌泰の変で大宰府に左遷された菅原道真が、自らの無実を訴えるべく幾度も登頂して天を拝したという伝承が由来なのです。
菅原道真は神として祀られるようになった最初の人で、全国にたくさんの神社(天満宮・天神社など)がありとても信仰されています。
サウナが神社!
サウナは必ずしもフィンランドなどの北欧やロシアやドイツのようなものである必要はなく、和風のサウナがあってもいいのではないか。
ラーメンだって中国から来たのに、醤油・味噌・豚骨・魚介など日本人なりにアレンジしたらおいしくなるし、サウナも日本人なりにアレンジしたら良いものが出来るのではないかと思い、菅原道真公にあやかってサウナの改装会議に「神社のサウナ」を企画提案してみました。
でも初めはダメもとでした。
私が育ったところの近くには由緒ある神社がありました。
学校への通学路で通るので当たり前のように行って手を合わせ拝み、春は花見やお祭り、夏は虫やザリガニを獲って遊び、秋はスケッチ大会、初詣ももちろん毎年行き、信心深いというよりも生活の一部でした。
私にとって神社は身近なものですが、親しみのない方にとっては宗教なので、敬遠されるのではないかという心配がありました。
しかし上司は受け入れてくれ神社サウナのプランで決定しました!
まずはセルフロウリュのサウナを「さうな天満宮」として、菅原道真公をメインテーマに神社の要素を入れました。
入り口にはしめ縄をしてそこから先は神聖な結界として、中に入ると可能な限り暗く照明を落して足元がかろうじて見える程度で、入り口のドアのガラスには黒いフィルターを張り外からの光も遮断し瞑想が出来るような空間に。
そこに巨大なikiストーブを依り代として、そこにだけスポットライトをあて霊験あらたかにお祀りしました。
手桶に水を入れ柄杓で水をすくい石に掛け、儀式としてロウリュを行って頂くようにしました。
ストーブの後ろには、となり町の基山にあるPICFAの人気のエイブルアートの作家、本田雅啓さんに描き下ろしていただいた菅原道真と天拝山と梅の絵をもとに作ったタイルのモザイクアートを配置しました。
外には榊で作ったヴィヒタを置き、BGMは雅楽にしました。(雅楽は近所のサウナーさんのアイデア)
神社を囲むようにある森林のことを鎮守の杜といいます。
メインサウナ室は天井までふんだんにレットシダーの木材を使用しているので「さうな鎮守の杜」としました。
こちらにも入り口にはしめ縄をし、サウナ室内にはオーダーメイドの鳥居を置き、そこにサウナストーブとは別にサウナストーンをお祀りしました。
日本人は古代より自然万物すべてのものや現象に、何かの役割を持った神様がいると考えます。特に石や木には宿りやすく古くから祀られているので、石と木で作られているサウナには必ずサウナの神様がいると思います。
多分ととのえることぐらいしか役割を与えられていない神様ではあると思いますが、サウナーの私にとっては大切な神様なので、「鎮守の杜」に丁重にお祀りさせていただきました。
完成した姿は神社とサウナがうまく融合した美しい姿で、サウナと和の要素がこんなにも違和感なく調和がとれるとは思いませんでした。
もちろん前回お話ししたようにサウナ自体もかなりのハイスペックなので、目の肥えたサウナーの方にもご満足頂けると思います。
アポロ計画さんには今までに前例のないサウナを、素晴らしいデザインと斬新なアイデアを短期間で構築し、安全な形で作って頂きました。
プロのこだわりと、細部に至るまでの作りこみで、感動的なサウナができました。
そしてこんなにも大胆な改装に踏み切って頂いた上司に感謝しています。
新型コロナが落ち着いて観光需要が戻って来た時にはご当地サウナは観光の起爆剤になると思います。
また各地にもっと個性的なサウナが出来れば面白さが伝わってサウナーの裾野がもっと広がり、日本人にもっとサウナが身近なものになります。
ご当地サウナがもっとたくさん出来たらたらいいなと思います。
次回は狂ったアウフグースをやる男の話です。
[柴田 健太郎 プロフィール]
天拝の郷アシスタントマネージャー