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【天拝の郷 柴田 健太郎の 九州サウナは熱かです!/第6回】島と神とサウナと人

2020年12月20日に福岡県の宗像市で行われた『島サウナプロジェクト2020大島 -MISOGI SAUNA-』というイベントに参加してきました。

 

その開催場所があるのは「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」として世界遺産登録された九州本土から6.5km離れた離島の大島。
禊(みそぎ)として海に入るしきたりより、島でサウナに入った後に海に禊のように入水するというイベントです。
有識者数名と一般参加3名という少ない人数で行われました。
私は神社をモチーフとしたサウナの天拝の郷で働き、無類のサウナ好きということで呼んで頂きました。

 

宗像・大島は博多から北東方面に1時間ちょっとの場所にある神湊より、フェリーで15分程のところにあります。

 

イベント当日に久々にフェリーに乗る私は、アトラクション気分でワクワクしていました。港から沖に出ると船は大揺れで時折つかまっていなければ立っていられない程、荒波の玄界灘の洗礼を受けているなと思っていたところ、普段と比べるとかなり穏やかな波とのことでした。

 

雲の切れ間から日の光が入り幻想的な光景の船からの景色に神聖なものを感じつつ、神宿る島に到着。

まずは今回のイベントを企画した渡海屋のゲストハウスでオリエンテーションを行い渡海屋の取り組みやイベント内容の確認、昼食へ向かう。

 

昼食は島で獲れた海鮮料理を食べられる「寿や三郎」で新鮮な海鮮丼を頂きました。サザエ・海老・マグロ・イクラなど新鮮で他では味わえない絶品でした。暖かい人柄の大将から平目の肝を別に頂きましたが、ひとくち食べたら口の中に旨味と甘みが広がり感動ものでした。

 

その後、世界遺産の施設「宗像大社 中津宮」に参拝。

境内には天の川が流れており、七夕伝説発祥の地とされ左に織姫神社、右に牽牛神社があり縁結びのご利益があるといいます。
海沿いの丘に位置し境内の階段を上り振り返ると鳥居の向こうは海が広がり、またその向こうには宗像大社辺津宮のある本土が望めます。

 

門をくぐると美しく立派な中津宮の本殿が厳かに佇んでいました。
本殿の創建は戦国時代で、宗像三女神の次女の田心姫神(タゴリヒメ)を祀っています。

 

中津宮では宮司さんに海へ入る安全祈願を御祈祷して頂きました。

御祈祷後には、三女神のことや中津宮の本殿の建築のことなどのお話をして頂きました。

 

宗像大社とは、沖ノ島の沖津宮、大島の中津宮、宗像市田島の辺津宮(総社)の三社のことを言います。

天照大神(アマテラスオオミカミ)の三柱の姫神を宗像三女神といい、沖津宮は「田心姫神(タゴリヒメ)」、中津宮は「湍津姫神(タギツヒメ)」、辺津宮は「市杵島姫神(イチキシマヒメ)」を祀っています。

 

海上交通の平安を守護する玄界灘の神として古代より信仰されていました。大和朝廷によって古くから重視された神々で遣隋使や遣唐使もこの島を目印として渡海しました。

 

沖津宮のある沖ノ島は、昔は「不言様(おいわずさま)」として一切口外が許されないとされ、今も立入制限されており、許可を得て入る人も全裸で海に入って禊をしなくてはならなく、また女人禁制である。

 

不敬ではありますが、常連しか来ないオールドスタイルの男性専用サウナみたいな島だと思いました。

 

中津宮を後にして向かったのは、かんす海水浴場で夢の小夜島という鳥居のある磯が印象的な美しい浜で、ここが今回のサウナスポットです。
シャワーや更衣室のある場所で、夏は観光客で賑わうそうですが当日は私たちでほぼ貸し切り状態でした。

 

用意されていたのはテントサウナのMOBIBAが二張り、到着した時には薪がガンガンに焚かれており最高の状態。

島の塩爺という職人が作った大島の塩で、身を清めたらテントにライドオン。

 

外が寒かったのでテントの中の暖かい空気が体を少しずつ溶かして柔らかくしてくれる。
そこで用意してくれていたのが、寿司桶に入った島で採れた甘夏のロウリュ水。

果実も入っていて見た目も楽しい。掛けると柑橘の爽やかな香りが広がり、嗅覚でも島の恵みを感じられる。

 

それからどんどんロウリュしていくと、ビニールの窓が曇り外の海の風景がかすみ、体感温度がガンガン上がっていく。どうしてもテントサウナは足元が温まりにくいので、うちわで蒸気を撹拌して下に降ろす。

 

身体をしっかり温めてから外に出て、また塩爺の塩で身を清めて神聖な海にダイブ。
遠浅の海水浴場なので泳げなくても安心です。

 

キンキンの海水は肌をキュッと引き締め、あまみが出てくるのが見なくても感じられる。
優しい波に揺られているのか、目が回っているのか判らなくなるぐらいの浮遊感で心地よさがMAXに。

 

しきたりで海の中に立っている鳥居の左から進み、鳥居の中をくぐり戻ってくる。

禊(みそぎ)として、罪穢れ(つみけがれ)を祓い、心身が清められるのを実感できる。俗世間で生きていると、自然の中でこのような体験をすることがないので新鮮さがあり、他では得られない感覚を感じられる。

 

普段サウナに入った後の水風呂では気持ち良さしか求めていないが、ここでは快感とプラス心のデトックスが出来る。神宿る島の神様のほんの少し近くまで行けたような気がしました。

そのあとは焚火の近くのリクライナーで外気浴。
そして大島産の甘夏ドリンクが飲め、漁師飯の地魚のフィッシュフライサンドと海藻のあかもくスープがサ飯として食べられてもう極楽。
地元の新鮮な食材で作ったものに勝るサ飯はないと思いました。

 

他では体験できないような素晴らしいサウナイベントが行われた大島ですが、私達以外はほんの少しの釣り客ぐらいしかおらず、観光客はわずかでした。
自然豊かで宗像大社が世界遺産に選ばれているにも関わらず、夏の海水浴シーズン以外は観光客がまばらとのこと。

 

また高齢化・人口減少が止まらず島の活気がなくなりつつある現状、今回のイベントを企画した渡海屋というゲストハウスやレンタル・体験コンテンツの開発運営を行っている会社が中心となって島おこしを行っています。

 

コロナ禍で都心の狭い部屋でテレワークをして過ごすようならば、自然豊かで観光資源にも恵まれている島で、サウナを楽しみながら穏やかに生活をしてみるのもいいと思います。

 

サウナを切り口に地方創生の良いモデルケースになれば良いと今後も注目していきます。

 

 

[柴田 健太郎 プロフィール]

柴田健太郎

 

天拝の郷アシスタントマネージャー

https://tenpainosato.com/

https://twitter.com/saunaguuji