【すみっこプレゼンツ サウナ平常心 ／第3回】
もとより、長生きしたくない性質である。
好きなものを食べ、好きなものを飲み、好きなことをして生きていく。
長生きのために摂生したくなどない。
そう思っていた。
不健康上等なわたしに転機が訪れたのはつい最近のことだ。
どうにも具合がよろしくないのである。
もともと成人してからほぼ毎日のように飲酒習慣があり
仕事が終わってからのオフへの切り替えを酒で行っていたし
嬉しいことがあっても酒、嫌なことがあったらもっと酒、
眠りに落ちるのだって必然的に酒の力を借りることになる。
そんな生活を20年以上続けており、冒頭のようなポリシーを持って生きてきた。
この春、勤務先にて部署異動を言い渡された。
毛色の違う仕事、人間関係を伴う雰囲気に慣れるのに苦労を強いられる。
よってわかりやすく酒量も右肩上がりになっていった。
勤務終了後に酒を飲んでは1日の出来事を反芻し、反省の日々。
頭痛持ちではあるが耐え難き痛みで朝を迎えることも増えてきた。
ちょっとこのままじゃやばくないか？
内臓が疲れてきたのかあまり食事を摂れなくなった。
飲酒も習慣ってだけで、うまいと思って飲んでいない気がしてきた。
なによりも頭痛の発作が来るのが怖い。
ネットで調べるとアルコール起因の頭痛もあるらしく
今までは飲酒欲が勝っていたために見て見ぬふりをしていたが
ここに来てようやく節酒に至ることになる。
休みの前の日だけ飲むことにしてみる。
案外睡眠に関しては最初の三日を過ぎればすんなり寝れるようになった。
浮腫みも当社比でしかないが減ってきた気がする。
驚くことにメンタルにも影響し、マイナス思考が改善されてきた。
朝晩ストレッチをし、凝りを緩和することで頭痛の回避も少しだけ可能になった。
次の段階はというと、けっこう時間が余るのである。
飲酒に費やした時間がまるっきり余るので、どうしたらいいのってこと。
そこでサウナに行くことにした。
今更すぎるがサウナってメンタルに超良くないですか。
知りませんでした。
先日、職場でガツンとストレスを受けた。
いつもなら酒を浴びるほど飲んで過ごすのだがここにきて禁を犯すことはできない。
わたしは空腹になると飲酒欲が強まる性質なのでまず、
仕事が終わってすぐ、食事を摂った。
それでもイライラが収まらない、どうしよう。
ここから最短ルートで行ける施設を脳内で検索にかけた。
頼るしかない。
2時間だけ現実逃避させてほしい。
サウナへ駆け込んだ。
いつもは混んでいるこの施設、賑わっているように見えたが炭酸泉に浸かって油断している間にお客がほとんどいなくなっていた。
平日の夜、空いている時間帯に夜景を見ながらボーッと蒸される感じ、
30分ごとのミニロウリュも最前に陣取って蒸気を浴び、
トドメの水風呂。
誰かが「哀しみを水風呂に沈める」と言っていたような気がするが、
わかってしまった。知ってしまった。
悔しさはサウナで蒸散させられるし、
哀しみは水風呂に沈められる。
完全にどうでもよくなった。
ととのった、というより「どうでもよくなった」が体感としてある。
なんてちっぽけなことで悩んでいたのか。
ちょっとだけ宇宙を感じたし、大いに気分がおおらかになった。
サウナ後に勧められたら変な壺を買ってしまうかもしれない。
そのぐらい(？)今ここにいるわたしは非常に気分が良い。
それでいいではないか。
一回だけロウリュタイムにわたししかいなくてわたしだけのロウリュを受けることもでき
控えめに言っても最高だった。
もう足を向けて寝れない。
ストレス緩和の決定打および持ち札をゲットできたのは大きい。
今では施設の特色を考慮し気分や体調によって目的のサウナに出かけることにしている。
それがここ数ヶ月の話。
今日、健康診断があった。
コレステロール値が高いと言われた以外は至って健康のようである。
今回は肝臓のことは言われなかったし体重、腹部周りもサイズダウンした。
今後は食事改善も考慮に入れるべきだという。
日々を気持ちよく過ごすためにさらに作戦を練る必要があるようだ。
ゲームみたいに自分を自分でコントロールできる日が来るのだろうか。
楽しみでもある。
