【たけぷーの冒険する熱波師への道/第5回】終わりのないマラソン大会
どうも、アドベンチャー熱波師(見習い)のたけぷーです。
私は、あまり普通の方が参加しないようなマラソン大会などに参加するため体力をつけています。
長距離・長時間のマラソン大会が多く、そのため、持久力はかなりあります。
その体力をいつか一人前の熱波師として活かせるよう日々精進しています。
みなさんご存知の「マラソン」。
距離も様々で1キロからフルマラソン(42.195キロ)、果ては100キロを超える大会まであります。
当然ながら決まった距離を走りきればゴールとなります。
しかし、世の中にはゴールまでの距離が決まっていないマラソン大会が存在します。
今回はそんなマラソン大会の話です。
終わりのないマラソン大会
冒頭で説明した、ゴールまでの距離が決まっていないマラソン。
その名は「バックヤードウルトラ」と言います。
「バックヤード」は裏庭、「ウルトラ」は、フルマラソンよりも長い距離を走るウルトラマラソンのこと、なので「裏庭のウルトラマラソン」となります。
「裏庭でウルトラマラソンをするの?」って感じですよね。
でも実際にその通りなんです。
始まりが、アメリカに住む有名な元ランナーの裏庭で開催された大会のため「バックヤードウルトラ」という名前が付きました。
この大会のゴールはどこかというと、走っている選手が最後の1人になったらゴールとなります。
「えっ?いや、よくわからない。。。」ってなりますよね。
それではルールを説明します。
ルール
①スタートの合図と同時に選手全員が走り出す。
②決められたコース(6.7キロ)を走ってスタート地点に戻る。
③次のスタートまで休憩をとる。
④1時間後に再びスタートする。
⑤①~③を延々と繰り返し、スタートできなくなったら失格。
⑥そして残った最後の1人が勝者になる。
つまり最後の1人になるまで、1時間ごとにスタートを延々繰り返すマラソン大会です。誰がいつ失格になるのか、最初の時点ではわからないため、「明確な終わりがない状態」でスタートします。
ランニングをしたことがある人なら「1時間に6.7キロなんて簡単でしょ」と思うかもしれません。
5時間でも34キロなので比較的簡単です。
しかし、この大会はそれを延々と何十時間も繰り返します。
最初は楽でも、どんどん体力と睡魔で、走ることがツラくなってきます。
実際参加してみた
この競技の日本での歴史は新しく、2020年2月に初めて大会が開催されました。
そして10月には世界各地で同時開催された世界選手権の日本大会が開催されました。
私はこの2回とも参加し、延々と走り続けました。
2回目に参加した世界選手権日本大会の開催地は高尾。
選手は2月の大会の上位選手から選抜されたメンバーでした。
選手は、それぞれが車で会場入りし、その車がそのままレース中の休憩場所になります。
多くの選手が休憩場所となる車にレース中の食べ物や飲み物を積んでいて、さらに後部座席から荷室をフルフラットにして足を延ばして寝ることができるようにしていました。
選手は6.7キロのランニングから戻ってくると車の周辺もしくは中で休憩して、時間が来たら次の周回に向かいます。
実際に走った私が心掛けたことは「とにかくスピードを出さない」。
ゴールがないため、速く走っても体力を消耗するだけです。
いかに体力を温存しながら、長く走り続けるかを考えました。
他の選手も同じ考えなので、基本的にスピードを出す選手はいません。
超長時間のランニングにおいて、「平坦、上り、下り」どれが一番気を付けないといけないと思いますか?
答えは「下り」です。
ランニングにおいて、下りでは自分の体重の何倍もの重さが膝にかかります。
短い距離なら膝にダメージが蓄積される前にゴールできるのですが、長時間のランニングではそうはいきません。
なるべく膝にダメージを与えないように細心の注意を払い、ゆっくりと走ります。
極端な場合、歩いてでも負担を軽減させる必要が出てきます。
この競技において途中棄権する選手の多くが膝へのダメージ蓄積により走れなくなることでした。
いかに膝や足全体にダメージを与えず、長く走り続けるか。
さらに体力も温存する。
そう考えると、走り方もみなさんがテレビで見るマラソン大会のトップ選手とは明らかに違った、小さくチョコチョコとした走り方になります。
走り方だけ注意すればいいわけではなく、走り終えてからの休憩時間の過ごし方も大切です。
私は1周を50分で走っていたので、次のスタートまでの10分間が休憩時間でした。
その時間の過ごし方は「5分睡眠、3分食事、2分準備」です。
1回に寝ることができる時間は5分間。
しかし、この5分間はとても重要で体力回復と眠気除去をすることができます。
とくに眠気はやっかいで、襲われるとフラフラになってしまい、走れなくなります。
そして、そのまま時間に間に合わなくて失格になる可能性もあります。
次に食事3分。
寝ることより大切なのが食事です。走れば当然エネルギーを使います。
そのため、エネルギーを絶えず食事から補給し続ける必要があります。
エネルギー補給のために、何を食べるかは選手それぞれですが、私はカップラーメン、カレー(ごはん無し)、ラムネ、キャラメル、グミキャンディーなどを食べていました。長時間食べ続けることができるように、なるべく好きなものを食べ、食べ飽きないよう選んだ結果です。
それでも、疲れてくると食べることがだんだん嫌になってきます。
しかし、食べ続けないとエネルギーがなくなってしまうので、強制的にでも食べます。長時間食べ続けることってかなりキツいです。
食事が終わったら、次のスタートに向けて2分で準備して、また走り始めます。
これをずっと繰り返します。
10月の世界選手権で、私はランニング・休憩(寝る、食べる、準備)を31時間繰り返し、32時間目のランニングで1時間以内にスタート地点に戻って来ることができず失格になりました。
31時間で走った距離は約208キロになります。
ちなみにそのときの日本大会優勝者は43時間(約288キロ)。
世界記録は75時間(約502キロ)です。
何が面白いのか?
「何が面白いのか?」と聞かれることがよくあります。
正直、走っているときは何も面白くも楽しくもないです。
「もう走りたくない」とさえ思います。
しかし、大会が終わると、達成感と悔しさがこみ上げてきて、また次に走ろうという気にさせてくれます。
そして、終わってから時間が経つとツラかったことを忘れてしまい、なんか楽しかったという思い出にすり替わってしまいます。
でも具体的に何が楽しかったのかは…わかりません(笑)そんな終わりのないマラソン大会「バックヤードウルトラ」、これから日本でも徐々に浸透して大会が増えていくかもしれません。
11月下旬には再びバックヤードウルトラの大会があります。
この記事がアップされるとき、私は3回目のバックヤードウルトラを走っていることでしょう。
60時間400キロを目指して。
それでは、また!!
[たけぷー。プロフィール]
たけぷー。本名、武井正幸。アドベンチャーレーサー、ウルトラランナー。
普通の会社員をしながらアドベンチャーレースやウルトラマラソンに挑戦中。
アドベンチャーレースにおいては国内で優勝入賞多数。
海外レースにも積極的に参加している。
ウルトラランナーとしては国内最長のマラソン大会、川の道フットレース520kmを2回完走。
参加したい大会はエストニアの「サウナマラソン」。
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