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【望月 義尚の 温浴コンサルタントの視点/第11回】これからどうなる、サウナ界隈

 近頃いろいろな人と会ったりSNSを見ていると、多くの人がサウナに関して共通の疑問や心配事を持っていることに気づきます。質問されることもよくあります。

長年温浴施設専門コンサルタントをやっているとはいえ、未来がどうなるかは分かりません。

しかし私なりにいちサウナファンとして、さらに施設経営の立場、メーカーや設計など関連業界の動きなども踏まえつつ、これからのサウナの動向について感じていることや思うところを少しお伝えしておこうと思います。

ハズレても何ら責任は持てませんが(笑)

 

■サウナブームはバブルのような一過性の盛り上がり?

 かつてはマイナーな嗜好で、典型的な衰退業種と思われていたサウナが、最近急激にメジャーになり、「老若男女が楽しめる、ちょっとお洒落で健康的な新しい文化」となりつつあることに戸惑う声があります。

おじさん臭いイメージだったサウナがあまりにも突如としてブームとなったので、「これは何かのバブルでは?すぐに萎むのでは?」と訝る声が出るのは当然のことかも知れません。

「Googleトレンド」という特定キーワードの検索状況を調べることができるサービスがあるのですが、それで過去5年間の「サウナ検索数」をグラフにしてみました。

望月

サウナ検索トレンド

 

ネット検索数には、大衆の関心度がダイレクトに表れていると言って良いと思います。

「サウナ」の検索はこれまでずっと横ばいだったのに、2019年夏頃から急激に検索数が伸びて過去の2.5倍くらいになっており、サウナブームに火が付いたのはつい最近であることが分かります。

そのカーブを見ると、今は急上昇の途中にあるように見えます。少なくともまだ減少傾向にはなっていません。

世の中の商品やサービスには「ライフサイクルカーブ」というものがあります。登場してからじわじわと認知度が高まり、やがて臨界点を超えると急成長を遂げ、そして徐々に成長が鈍化し、ピークを過ぎた後はだんだん衰退していくという、マーケティングの基本的な考え方のひとつです。

その成長曲線のイメージを当てはめると、サウナブームは今後もまだ伸びるだろうと予想できるのです。

ただし、すべてがきれいなライフサイクルカーブを描くのかというとそうではありません。

2000年初頭の岩盤浴ブームを思い出すのですが、盛り上がっていたブームが2006年の岩盤浴バッシング報道によって急激に失速し、その後数年で全国に2千箇所以上と言われた岩盤浴専門店はほどんど姿を消してしまいました。

死亡事故、感染症、風評…何かネガティブな大問題が起きると、盛り上がっていたブームが突然終焉してしまうことがあるのです。

そうならないように願っています。そのためには、サウナに携わる人すべてのたちが安全衛生を軽視せず、サウナブームを大切に育てていくことが必要なのです。

 

■サウナブームって東京だけなんじゃない?

 これもご支援先の温浴施設でよく言われます。「望月さんは波に乗れって言うけど、それは東京の話で、地方にはサウナブームなんて来てませんよ」と。

たしかに首都圏の盛り上がりに比べると、地方ではサウナハット姿の入浴者を見かけることもまだ少ないですから、そう感じるのもうなづけます。

これもGoogleトレンドで調べてみました。都道府県別の検索全体の中に「サウナ」検索が占める割合をグラフ化すると、東京都が突出して高いことが見て取れます。

望月

サウナ検索都道府県

 

しかし、東京だけの現象なのかというとそうでもありません。東京のサウナ検索状況を100とした時に、2位は北海道の73、4位は石川県62、5位は山梨県58というように、首都圏以外の地域も上位にランクインしています。

これは「東京だけのブーム」と見るよりも、「東京で始まったサウナブームは全国各地に飛び火しして拡がりつつある」と見るべきではないかと思います。

いずれ各地が東京並みになっていくとすれば、現在はまだ静かな中四国地方も、いずれ今の4倍くらいにサウナマーケットが膨らむ可能性がある、と考えることもできるわけです。

この波を見逃す手はないと思います。

 

■コロナ禍で温浴施設はどんどん減っちゃう?

 昨年以来、地域によっては老舗サウナ施設廃業のニュースが続き、暗い気持ちになった人も多いと思います。

突然売上が減少したり、休業や営業時間短縮しなければならなかったりということが続いていますから、資金繰りに余力のないところは経営に行き詰まってしまう可能性があります。

コロナ禍が長期化すれば、元々経営が苦しかったところは将来の展望を見いだせなくなり、事業継続を断念する企業も出てくるでしょう。

しかし、温浴施設は他の用途に転用しにくいという宿命があります。解体撤去にも莫大な資金が必要ですので、仮に現オーナーがギブアップしても、施設が老朽化で限界を迎えるまでは、次のオーナーによって経営再建となり、営業を再開・存続する可能性が高いのです。

つまり、温浴施設数はそう簡単には減らないということです。

しかし、このことはユーザー的にはひと安心なのですが、事業者としてはたまったものではありませんね…。

 

■サウナのマナーが悪い

 「初心者は他人と共有するサウナのマナーを分かってない。」

「ブームに乗った若者がグループでやってきて騒ぐのがうるさい。(ドラクエ)」

「黙浴などのエチケットを守らない人が多い。」

いまネットにはこんな不満や怒りの声が溢れています。

たしかに、ここ2年で急激に盛り上がったブームですから、まだマナーを理解できずに周りに迷惑をかけてしまう初心者が多いのは事実だと思います。

しかし、誰もが最初は初心者。いずれ施設の啓蒙活動やお客様同士のコミュニケーションから、公共の場での振舞い方を学び、大人になっていくはずですから、ひどい状況は一時的なことだと思います。

あまりギスギスしないよう、見守りましょう。

施設側は、貼り紙を掲示しているだけでは伝わりませんので、もっとマナー啓蒙のやり方を工夫する必要があります。これまで省力化で収益性を確保しようとしてきた弊害が出ているという面もありそうです。

ただ、いずれ割合は下がるとしても、どんな世界でもマナーを守れない人が一定数いるのも現実です。

せっかくサウナに行ってもかえって疲れてしまっては何のためのサウナか分かりませんから、あまり完璧を求めず、衝突を避けて寛容に折り合いをつけていく術を持つことも必要ではないでしょうか。

 

■特定施設に人気集中

 サウナに行きたいのに、一部施設は混雑していて快適に利用できないという状況がありますが、これも一時的なことです。

ある施設が大繁盛していれば、他の施設の経営者も「どうしてあんなに繁盛しているのか?」を勉強しますから、いずれ良い点は波及していきます。

あんなに繁盛するなら、と新規参入する施設も出てくるでしょう。

人気要素を備えた施設が増えて来れば、特定施設だけに混雑が集中することはなくなってくるのです。ただし、施設の改修や新規開業には時間が必要ですから、状況が変わってくるまでに1~2年かかるかも知れません。

もうひとつ、大手マスコミに取り上げられると一気に集客が増えるという現象がありますが、経験上マスコミ取材の宣伝効果はせいぜい2~3ヶ月です。しばらくすれば落ち着いてきますので、それまでは他の施設の施設に行くなどして待っていれば良いと思います。

いずれにしても大混雑はずっと続くわけではありませんので、しばしお待ちください。

 


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[望月 義尚(モチヅキ ヨシヒサ)プロフィール]

望月 義尚

温浴施設の経営コンサルタントというレアな職業を確立したパイオニア。日本中にロウリュを広めた仕掛け人でもある。温浴業界の発展が人類に健康と幸福をもたらすと信じて2006年に株式会社アクトパスを設立、代表取締役に就任。

Twitterアカウント: @spamochi

公式サイト: https://aqutpas.co.jp/

 

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