【天拝の郷 柴田 健太郎の 九州サウナは熱かです!/第11回】日本人の知らないショーアウフグースの世界
日本人はクリスマスやハロウィンなど日本に関係のないイベントも全力で楽しみますし、日本中どこに行ってもイタリアン・中華・インド料理など海外料理の専門店があります。
日本人は海外の面白い文化を抵抗なく受け入れて楽しむのが上手だと思います。
今、ヨーロッパを中心に盛り上がりを見せているサウナのムーブメントがあります。
日本で本格的に取り入れれば、とんでもないコンテンツになると思います。
それはショーアウフグースです!
アウフグースのワールドカップ『AUFGUSS-WM』をご存知でしょうか?
毎年、各国の国内大会を勝ち抜いて来た凄腕のアウフグースマイスター達が、一堂に会して技術とエンターテインメントを披露して世界一の称号を目指す一大イベントです。
日本人にはアウフグースより熱波という方が馴染み深いでしょうが、現在のヨーロッパで行われているアウフグースと日本独自に進化した熱波とはだいぶ趣が違います。
日本での熱波は、体感を増やすのが目的と感じます。湿度の低いサウナが多い日本では、湿度の高いことが珍しい為、その違いを楽しんでいます。
その違いをしっかり感じてもらうために、ひとりずつタオルやうちわで強く風を浴びせて強い熱さを楽しんでいます。
あと日本のサウナは北欧の様な小さめのサウナ室が多く、タオルパフォーマンスがしにくい為、湘南乃風のライブのように頭上でタオルを回すヘリコプターという技や上から下にタオルを降ろすパラシュートという技で撹拌する位にとどまっています。
ヨーロッパで行われているアウフグースは強い体感よりも、心地よいサウナ室とエンターテインメントに重きを置いています。
アウフグース創生期は風を強く浴びせる体感の増すプログラムでしたが、現在は主に香りや音楽・照明でサウナ室を彩り、多彩なタオルテクニックで魅せながら蒸気を撹拌させる。五感で感じる総合芸術と昇華しています。
またヨーロッパのショーアウフグースを行う施設のサウナ室は大型で200人以上収容できるサウナ室もあります。ヒーターも大型のガスヒーターで、1000㎏以上のストーンを使っている為、大量の氷をのせても一切問題ありません。特にヒーター周りのスペースが広く、大きなタオルを踊るように回せる余裕があります。
演出設備も整っており、照明はDMXでプログラム制御しておりアウフグースのテーマによって様々な演出ができ、音響は4方向にスピーカーを配置しダイナミックなサラウンド、他にも大画面のモニターやプロジェクションマッピングできる施設もあります。
2019年に行われたAUFGUSS-WMの会場はオランダのヘルダーラント州にあるテルム ベレンドンクという施設で、インド風やアラビア風のサウナやフィンランド式の伝統的なサウナなどの大小さまざまな13ものサウナがある中の一つ、「サウナシアター」がメイン会場でした。サウナシアターは大型のサウナヒーターが中央にある六角形のサウナ室で、4.5mのLEDスクリーンと光と音のショーアウフグースが楽しめます。
2019年のAUFGUSS-WMはポーランド、イタリア、スイス、オランダ、ベルギー、ドイツ、デンマーク、チェコ共和国、カナダなど16カ国より、個人32名、チーム32組が参加して1日1,200人のゲストを迎えて、5日間開催されました。(2020年は新型コロナ対策で中止)
14か国の国際的な専門家審査員が、プロ意識、熱量の調整、タオルテクニック
香りの選択、ショーアウフグースのテーマ、感情、創造性、雰囲気、チームスピリットなどを基準に審査します。細かいところだと挨拶の声の大きさ・演技時間の正確さ・水や氷の量・照明プラン・安全や衛生管理などの項目まであり、かなり細かく審査します。
特に重要視されるのはタオルテクニック・香り・テーマです。
出場者のタオルテクニックは現在の日本人で最高峰のアウフギーサーでさえ、まだ全然手が届かない程のテクニックで、身につけるには年月を費やした熟練が必要です。技の難易度・成功率・組み合わせ・美しさ・フィジカルどこに注目しても世界基準は段違いです。
香りは揮発速度に応じて、トップノート、ミドルノート、ベースノートと使い分け、シトラス系・フローラル系・ハーブ系・樹木系・樹脂系・エキゾチック系・スパイス系などのエッセンシャルオイルをテーマに合わせて選び、組み合わせのセンスも必要です。また必要に応じて香りを長続きするためにオイルを氷玉につけて使用したりもします。
テーマは国や民族・物語など自由に選ぶことが出来ますが、一貫してそのテーマに沿って世界観をつくり上げ、創造的・斬新・ユニークなどのテーマで会場全体を包む雰囲気をつくれたか評価されます。
ポーランドが前大会・前々大会と個人もチームもW優勝しており、現在の最強豪国として君臨しています。
そのポーランドの2019年の個人の部での優勝者カロリーナ・ヤルザベクは初の女性優勝者でした。
テーマを「マジックナイト 七千年に一回蘇る人形の物語」とし自らがマリオネットになって美しい世界観のパフォーマンスで観衆と審査員を魅了しました。
次大会の2021年9月のAUFGUSS-WMはポーランドの施設テルミー リズムスキアに今年新設された「コロッセオ サウナアリーナ」です。古代ローマを思わせる施設にある闘技場のような円形サウナ室で集客人数は300人と巨大で、ショーアウフグースの為に建設されました。
昨年はコロナで大会が行われなかった分、今年はしっかりと練習をして本番までに仕上げてくると思われますので、素晴らしい大会になるでしょう。
AUFGUSS-WMは2012年より始まっていますが、ここ5年程で一気にレベルが上がってきています。
その5年程前のヨーロッパの状況に現在の日本の状況が近いと感じます。
ある者はテーマのあるアウフグースを行い、
ある者はYouTubeでビギナー用の動画を作り、
ある者は講習会を開きアウフグースを広めることに努め、
ある者はSNS動画で技術を高めあい、
ある者は知識を共有しあっています。
その頃と今の日本がとても酷似しています。
まもなく日本人のアウフグースは世界レベルに届き爆発的にブームとなります。
日本からAUFGUSS-WMに参加するものが出れば、新しいサウナの楽しみ方が日本人に認知されます。
もしも日本にショーアウフグースのできるドイツ式の大型サウナのあるサウナ施設が出来れば、ライブハウスに並ぶように連日サウナに観客は集まり、人気のアウフギーサーはスターのように観衆を魅了するでしょう。
そんな未来を妄想して私は今日もひとり家でタオルを振ります。
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[柴田 健太郎 プロフィール]
天拝の郷アシスタントマネージャー